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大学生の研究がスムーズに進まない理由

「大学生 研究」でGoogle検索をすると、真っ先にサジェストされるのが「鬱」だったりします。せっかく希望にあふれて(?)研究室に入ったにも関わらず、鬱になってしまうのは悲しいことです。どうして、大学生は研究を進める上で鬱になってしまうのでしょうか?

 

研究が上手く進んでいれば鬱になることはないでしょうから、「研究がスムーズに進まないこと」が鬱になる最大の要因と思われます。そこで、大学生が研究室に配属されてから、研究がスムーズに進まないという事態に陥る理由や気をつけるポイントを思いつくままに書いてみようと思います。

 

研究室配属後の最初の落とし穴

大学生(修士過程の大学院生を含む)の多くは、4月から研究室に配属されることになります。たいていの大学の場合、学生が自由に配属される研究室を選ぶことができます。人気の研究室には学生が集中するため、成績順やジャンケンなどで学生が振り分けられます。希望通りの研究室に配属された学生は、期待に胸を膨らませて研究室に行くことになります。

 

研究室に配属され、基本的なルールを覚えると、研究テーマが割り当てられます。理系の研究の多くは、過去の積み重ねの上に成り立っているため、学生が思いつきで研究テーマを考案することはまずありません。大抵は教授、准教授、助教の方々の長年の知見と研究室が積み上げてきた過去の研究成果を土台として、学生の研究テーマが決定されます。

 

実は、この研究テーマ決定のタイミングが最初の落とし穴だったりします。研究テーマの決定は、教授が学生の力量と本人の意向とを換算して決定します。しかし、研究テーマが決定した直後から、本当にやりたい研究でないとやる気を無くす学生も多いのです。また、研究テーマの決定時期は学生によってバラバラです。同期の研究テーマが決まっているのに、自分は研究テーマが決まっていないと焦燥感を抱き、ムダなストレスを貯めることになりがちです。研究室に配属されて研究が始まると、毎日が競争のような気分になるためです。

 

上手くいかない研究は最初から決まっている

研究というものは長い期間にわたって行われることが通例ですが、最初に無理そうに思えた研究テーマが突然輝き始めることや、逆に最初有望だと思われていた研究テーマが急に方向性を失って瞑想し始めることは稀です。

 

研究の企画・構想の段階で、最終的なゴールや、ゴールを目指す道筋が明確なのか不明確なのか、それだけで研究の成否は8割型決まってくるのが実情です。そして、大学の研究室で研究テーマを決定するのが教授、准教授、助教などの大学教員であるかぎり研究の成否の8割は学生側の問題でなく、指導教官側の問題であるといえるでしょう。

 

もちろん、一部の学生には、研究の企画・構想段階での教官の想定の範囲を大きく上回る画期的な成果を上げる人も見受けられます。しかし、そのような学生は全体の5%以下ですし、そういう一部の学生をみて一喜一憂することは、非常にもったいないことです。

 

すなわち、研究がスムーズに進まない理由としては、教官側が十分に研究の進め方を考えることなく、学生に研究を丸投げしているという背景があるのです。また、大学の研究室に配属される学生のうち、一人の教官が担当する人数はせいぜい3~5人程度と少ないので教官側に教育の経験が蓄積されにくいという側面もあります。「むかし、優秀な学生が適当な指導でもしっかりした卒業論文修士論文)を作成したから、他の学生も同じように適当な指導でも自分で考えて良い研究をしてくれるはずだ。」といった、無責任な指導理論を身につけている教員さえいるのです。

 

逆に、非常に面倒見の良い先生の場合は、あらゆるタイプの学生を想定して、綿密に研究の構想をねったり、あるいはこま目に学生をフォローする体制を整えた土台のもとで研究テーマを設定し、学生に割り振ります。このような教官のもとでは、平均的な学生はもちろん、多少実力が不足している学生でも、立派な研究を行うことがかのうです。基本的には面倒見の良い教官に指導される方が、面倒見の悪い教官が指導するよりも、研究プロセス全体を通じての教育効果も大きのです。

 

研究がスムーズに行かないときの心構え

すでに述べたように、研究というものはスタート時点でスムーズに進むかどうかがだいたい決まっているのです。しかも、研究がスムーズに行かないことの原因の8割は教官側にあると考えられるのです。

 

では、もし配属された研究室の環境が悪くて、研究が上手く進まなかった場合は、どのような心構えをすることが大切なのでしょうか?

 

1. 完璧主義を捨てる 

研究は上手くいかないものだ。上手く行かなくても問題はない。そういう気軽な気持ちで望むことが大事です。

2. 教授や先輩に研究の状況を理解してもらう

大学の研究室の教員には、学生の研究の進捗にあまり関心を持たない教官もいます。大事なことは、学生側から教官にアプローチして、研究の進捗や、実際の状況をよく理解してもらうことです。研究が上手く行ってなくても、教授がそれをしってサポートしてくれたり、成果を分けてくれたり、卒業論文を手伝ってくれたりする場合があります。

何よりも孤独でないということが非常に大事です。人間は孤独になると悪い考えが浮かびやすく、脳の働きも低下しがちです。

3. ゴールを先に決める

研究が辛くなってくるのは、出口が見えない時です。出口(ゴール)が明確だと、研究が辛くなった時に光となり、道標となります。あたらしく研究室に配属された学生にはゴールが見えません。まずは、研究室の一番しょぼい先輩の卒論を読みましょう。最悪の場合、この程度でも卒業できるんだと思えれば、ゴールが見えたということです。

 

余談:同期先輩とは競争しないことがコツ

研究室では同期と競争しているような気分になるのは理由があります。研究室に配属される前は個人行動が多かったであろう学生が、一度研究室に配属されると四六時中同期や先輩後輩と一緒に時間を過ごすようになるためです。一緒にいる時間が多くなると、いやでも同期や先輩を意識してしまうものです。同期よりも自分のほうが研究が進んでいる/成果を上げている。あるいはその逆。そういった思いは、精神衛生上よくないに決まっています。大事なことは、教員は様々な学生がいることを経験上知っており、特に良い学生/悪い学生をひいきしようという意思は少ないのに、学生側が過剰に同期との差を意識してしまうことが多いということです。

 

同期と競争しているという意識は、精神面のストレスを大きくするだけでなく、研究を進める上で、実質的な弊害もあります。競争しているという意識が強い人は、同期に質問するという行動を取りにくくなるのです。

 

研究を進めていくと、研究の過程で分からないことや人に相談しないと先に進めないことが増えてきます。そういう時に、同期への競争意識が強すぎると、自分一人で考え込んでしまい、不必要なストレスを貯めこむことになります。また、大学生の研究は一般的に1年近くに及ぶ長い期間にわたって行われるので、ストレスを溜め込んだまま長期間が経過すると心が不健康になってくるというわけです。日頃の研究室生活の心構えを変えるだけでもストレスを低減させることが可能でしょう。